SNSが凍結するリスクと情報発信者はどう向き合っていくべきか

TwitterやInstagramといったSNSをビジネスに活用している人は多いです。

拡散力があり、一気に大量の見込み顧客と繋がる可能性を持つSNSですが、難点があるとするならば「アカウントが凍結するリスク」があることです。

今までは「真っ当にSNS運用をしていたら凍結なんてするわけがない」とか「SNSが凍結するだなんて胡散臭いビジネスをしている証拠」のような論調がありました。しかし今は違います。普通にSNSを運用していてもアカウントが永久凍結され、それまでに集めてきたフォロワーが意味をなさなくなってしまう時代です。

現に最近では「プレゼント企画をしただけでアカウントが凍結された」「外部へのリンクを貼っただけでアカウントが凍結された」「過去にツイートした内容と同じような内容のツイートをしただけでアカウントが凍結された」という声もよく聞きます。

それらが本当にアカウント凍結の直接的な原因かどうかは定かではありません。ただ、以前であれば「当たり前」の範疇でSNSを運用していても、いとも簡単に凍結されてしまう可能性があることは定かです。

Twitterを眺めていると「アカウントが凍結されるリスクのことを考えていたら不安で夜も眠れなかった」と、それなりに事業が上手くいってそうな経営者の方が呟いていました。そこまででないにしても、同じような不安を抱えている人は珍しくないのではないかと思います。

そういうわけで、この記事ではオンラインを主戦場とする情報発信者・起業家が「SNSアカウントが凍結するリスク」とどのように向き合っていくべきかを書いていきます。

目次

結論:SNSに依存してはいけない

「SNSが凍結したら売上がゼロになってしまうし、完全に再起するまで時間がかかる…」という状況は、端的に言ってハイリスクすぎます。

今の時代では、SNSアカウントなんていつ凍結するかわかりません。真面目に運用をしていたとしても、何かの手違いでアカウントが凍結される可能性を否定できない時代です。(僕の経験上、海外法人の提供しているサービスは、一度凍結などされてしまったら異議申し立てができないケースが大半です)

また同業者からのやっかみや妨害工作を受ける可能性があります。例えば、Instagramだけで大きな規模の売上を上げていたペット関連事業の経営者が、同業者やアンチからの通報を受けて、数万人以上いたインスタアカウントが永久凍結されてしまったという事例もあります。

ビジネスの立ち上げ期においては、まずは1つの媒体を一極集中的に攻略することが、効率もよく理にかなっています。

ただ、ある程度メディアが育ってきたら、1つのメディアで獲得できた影響力を活かして、別の新しいメディアを育てていくことを推奨します。

それにTwitterにしてもInstagramにしてもTikTokにしても、これから先も永久不変に流行り続ける保証はありません。それらの媒体自体が、いわゆる「オワコン」化するリスクも孕んでいますし、常に最悪の事態を想定しながら次の手を打っていかねばなりません。

よりディープなストック型メディアへ送客する

では、どうしたらいいのか。その答えは「SNSからクローズドなメディアに送客すること」だと僕は考えています。

例えば、ブログやYouTubeというメディアは、アルゴリズムの変動があるため、安定的に自然流入だけでアクセスを伸ばし続けることは難しいかもしれませんが、過去に投稿したコンテンツを網羅的にユーザーに見せることができる「ストック型のメディア」という性質があります。

そのため、基本的にはこちら側がコンテンツを全て削除しない限りは永遠に残り続けます。(厳密にはYouTubeはGoogle社が提供しているプラットフォームなので、凍結のリスクがゼロではありませんが、現実的にSNSよりは遥かに安定していると言って差し支えないでしょう)

それにフロー型のSNSは、すぐに自分のコンテンツ(=投稿)がタイムラインで流れていってしまいますし、Twitterなら140文字。Instagramなら10枚のフィードと、ユーザーに提供できるコンテンツのボリュームには限りがあります。

もちろん、Twitterの場合はツリー型の投稿や、Twitter Blueの機能である140文字以上の長文投稿もできます。しかしSNSはユーザー心理的にも「ライトに情報を受け取るメディア」として認知されているので、深く濃い情報を提供することに限界があると考えるのが、一般論として妥当ではないでしょうか。

それに、SNSの場合は、自分のコンテンツと他者のコンテンツが混在して表示されます。そのため、自分の投稿に興味を持ってくれた人がいたとしても、すぐに他者の投稿へと離脱してしまう可能性が非常に高いです。(これはYouTubeやnoteにも言えることです)

一方でブログの場合は、コンテンツもデザインも全てが自分のものです。もちろん「戻る」ボタンをクリックされてしまって、検索結果画面へと離脱される可能性はありますが、一度サイトを訪れてくれたユーザーには「自分だけの世界」を提示することが可能です。

そのため、SNSで獲得したリーチを、ブログのようなディープかつ専門性が高いメディアに繋げて、浅く広く集めた見込み顧客のエンゲージメントを更に高めていくイメージを持つといいでしょう。

マーケティングファネルの上層部にSNSがあり、その1つ下層にブログがある構図を想像してみると分かりやすいはずです。

最終的に更にクローズドなメディアへ送客する

SNSやブログ、YouTubeなどのメディアで情報発信をしているのなら、最終的に最もクローズドなメディアであるメルマガかLINE公式に誘導することを推奨します。

SNSやWEBメディアは基本的にプル(引く)型のメディアです。つまりユーザーがあなたのコンテンツを見つけるのを「待つ」必要があります。

一方でメルマガやLINEはプッシュ(押す)型のメディアです。メルマガやLINEに登録をしてもらえば、こちら側から伝えたい情報や届けたいコンテンツがある場合には、メールやLINEを送るだけで一気に大量の読者さんにメッセージを届けることができます。

ただLINEの場合は、やはりSNS同様にアカウントの凍結リスクがあります。LINEが凍結されてしまったら、過去に登録をしてくれていたユーザーに対して、コンタクトを取ることは原則できません。

一方でメルマガの場合は、仮にメルマガ配信スタンドからBANされてしまったり、配信スタンドを運営している会社が倒産してしまっても、メールアドレスを保有さえしていれば、また他のメルマガ配信スタンドを契約すればいいだけの話なので、安定性は抜群です。だから僕はLINEをメインで活用する場合でも、できるだけ見込み客のメールアドレスを取得することを推奨しています。

  • SNS(Twitter、Instagram):最もライトなメディア
  • ブログ、YouTube:よりディープなメディア
  • メルマガ、LINE:最もクローズドなメディア

上から下にいくにつれて、世界観が濃くなり、そして人数は少なくなっていきます。まるでコーヒーをドリップするように、自分の発信やコンテンツに興味関心がある人を抽出していくようなイメージがわかりやすいはずです。

そして、最もクローズドなメディアで情報を受け取ってくれている「最も関係性の濃い見込み客」に対して、彼らの悩みやニーズを満たすような商品をオファーするのがダイレクトマーケティングの鉄則です。

SNSを運用する目的は何か?

このマーケティングの全体像を踏まえて考えてみてください。僕たちがSNSを運用する目的は一体なんでしょうか?

おそらく最大の目的は「新規見込み顧客」の集客にあるはずです。拡散性が高く、多くのユーザーが活発に行動していて、コミュニケーションコストの低いSNSは、特に「認知を獲得する」フェーズを攻略するのに適しています。それに加えて、

  • コンテンツを作成する手間暇がかからない
  • フロー型のメディアなので、すぐに投稿が流れる
  • だから失敗が許されるし、テストがしやすい
  • つまり情報発信を始めるハードルが低い

という利点があるため、多くのビジネスプレイヤーが真っ先にSNSでの発信に着手します。そして、その「楽さ」という性質から、SNS以外の集客方法に目を向けなくなる傾向にあるのです。

何か1つのことを盲信してしまうリスクは「目的意識を失ってしまうこと」にあると僕は考えています。SNSをやることが人生の一部、あるいは人生そのものになってしまい、何のためにSNS運用をしているのかを忘れてしまう人はあまりに多いです。

僕は事業の1つとしてアパレル系のECをやっていますが、以前とある不手際でInstagramへのログインが永久にできなくなってしまったことがあります。そのECはInstagramを使って集客していたので、その時は精神的に落ち込みました。

ただ、結局その次の月の売上は前月とほぼ変わりませんでした。なぜなら、広告を使った集客も軌道に乗っていたことと、既存の顧客リストに対してLINEとメルマガで新作の案内を送ることができていたからです。そして、既存のお客さんに対して新しいインスタアカウントを案内しました。

まだ以前のアカウントの半分ほどしかフォロワー数は戻っていませんが、今では売上も利益も過去最高水準となっています。

仮にSNSアカウントが凍結されてしまっても、売上に大きな影響が及ぶことがない。そんな状態を作り上げるためにも「そもそもSNSを何のために運用しているのか」という視点を常に忘れないことが重要です。

常に「次の選択肢」を用意しておく

SNSに限った話ではありませんが、特定の武器が使えなくなった時のための代案は常に用意しておくべきです。

「凍結」で言えば、コンテンツマーケティング実践者にとっては「クレジット決済代行会社」問題も常にホットな話題です。今まではStripeが大きな人気を博していましたが、2022年末ごろから無形商材を提供している事業者のアカウント凍結が目立つようになりました。しかもStripe内に留保していた資金がロックされる事案が続いたことで、多くの事業者が不安の声を上げるようになりました。

もし仮にStripeしか決済代行会社が選択肢になかったなら、Stripeの凍結によるダメージは甚大でしょう。

ただ、僕の場合はStripe以外にもいくつか選択肢があります。例えば、ずっとお付き合いのあるアナザーレーンを使い続けていますし、最近だとUnivapayの審査が通り、新しく使えるようになりました。また過去に使ったことのあるテレコムクレジットとの繋がりもあります。

SNSも同じです。「集客」でいうと、僕は2014年にメルマガを始めてから、ずっとSEO集客をメインでやっていました。途中から戦略が当たって軌道に乗るようになり、1日に5件〜7件のメルマガ登録が毎日入るようになったのです。(このブログの前身となるブログです)

最初の1年くらいは毎日記事を書いていましたが、途中からはコンサルティングやコミュニティ運営に力を入れるようになったこともあり、新規の記事投稿は1年半ほどで全く行わないようになりました。それでも、過去に書いた記事が検索上位を維持していたため、やや微減したものの、1日に3〜5件ほどのメルマガ登録がそれから4年半くらいはずっと続いていました。

しかし、途中から「この状態が永遠に続くことはないだろうな」と薄々感じるようになったのです。新規で記事を書いていないサイトがずっと検索上位にいるはずもないし、競合たちは同じようなキーワードで狙ってくるし、2010年代後半には企業サイトのドメイン貸しが流行り始めました。明らかに競合の数も質も強くなっていったのです。

だから僕は途中から広告集客にシフトするようにしました。既存のコンテンツを活かしながら戦えるリスティング広告と、全く新しい取り組みとして始めたFacebook広告。どちらもすぐに軌道に乗りました。予算をかければかけるほどリストが増えるので、精神的にも非常に余裕が生まれました。毎日寝る前にAnalyticsを見ては一喜一憂することがなくなったのです。

もしTwitterが凍結されたら、Instagramが凍結されたら、ビジネスが再起不能状態に陥ってしまうのであれば、今すぐに「次の手」を考慮し始めましょう。そうしない限り、いつまで経ってもプラットフォームに命運を握られた状態が続いてしまいます。いわば生殺与奪の権を他人に委ねた状態でビジネスを続けていかなくてはならないのです。

安定感のあるビジネスにシフトする

Twitterで集客をして、有料noteやBrainを販売する。これも立派なビジネスモデルの1つです。ただ、特定のプラットフォームに依存したビジネスは常に売上が暴落するリスクを孕んでいます。

アフィリエイトやYouTubeも同様です。アルゴリズムの変動によって検索順位が下がったり、再生回数が激減したり、あるいは売れていたアフィリエイト案件が終了したり、承認率や広告単価が下がったりといった諸々の理由によって売上が激減するリスクは、誰もがもっと真剣に考慮しなければいけません。

「事業」に完全なる安定感なる概念が存在するのかは微妙ですが、少なくとも「プラットフォームへの依存度を極限まで下げたビジネスモデル」を最終的には目指していくべきです。

つまり、

  • 自分のメディア経由で
  • 自分の商品やサービスを、
  • 自社決済で販売する

というビジネスモデルです。もちろん、それぞれのステップにおいてプラットフォームの力を活用するシーンは必ず出てきます。見込み客を集客するステップでは、YouTubeやSNSといったプラットフォームを。見込み客を教育するステップではLINEやメルマガ配信スタンドを。自社決済をする場合は決済代行会社を使用することになるでしょう。

重要なことは「依存」ではなく「活用」することです。

つまり、ある1つのプラットフォームが使えなくなってしまったとしても、別の代替サービスを使えば何も問題なくビジネスを続行できる状態を作り上げていきましょう。

SNS依存から徐々に脱却しよう

もし今現状のビジネスモデルがSNSへの依存度が高いのであれば、徐々にその依存度を下げていきましょう。

まず真っ先にやるといいのは「リストを獲得すること」です。つまり、SNSからメールマガジンやLINEへの登録を促すということですね。(LINEも凍結のリスクは避けて通れないので、LINEを主に使う場合でもメールアドレスも同時に登録してもらう仕掛けを施していきましょう)

そのために必要となるのが、メルマガかLINEを登録してもらうためのランディングページと、登録のインセンティブになるような無料プレゼントです。無料プレゼントはDRMの世界では「リードマグネット」と呼ばれます。

もちろんメルマガやLINEの配信をステップ化して、教育の自動化ができれば越したことがないですし、最終的には自社商品をオファーできればそれに越したことはありません。ただ、まだそこまでの準備ができていないのであれば、とりあえずリストだけ取ってしまって、手動で週に1〜2回配信するのでも良いですね。

そして、見込み顧客への価値提供(コンテンツ配信)を行いながら、徐々に新商品の準備を始めていきましょう。もちろん「どんな商品があったら欲しいか」を事前に見込み客に聞いておいて、実際に需要があることが確定した商品を作って販売することも可能です。

このようにクローズドなメディアでプッシュ型のマーケティングができれば「顧客が欲しい商品を売る」ことの難易度を下げることもできるのです。

特定の1つの対象を絶対化しない

今回はSNS凍結に関する話でしたが、そもそも僕たち人間は「特定の1つの対象を絶対化する」から、あらゆる物事が上手くいかなくなるのだと思います。

例えば人間関係にしても、たった1人の友達や親、恋人との関係性が全てだと思い込んでしまうと、必ず歪みが生じてしまいます。その結果、人間関係に悩んだり、現実的な物事が上手く運ばなくなったり、最悪の場合は悲しい事件を引き起こしてしまうこともあるでしょう。

あるいはアイドルとファンの関係性にも言えることです。熱狂的なファンは、ほんの小さなキッカケでアンチへと属性を変化させます。だからビジネス系のインフルエンサーが「ファン化」をうたったり、過激な意見でフォロワーを煽動しているのを見ると、とても危険なことのように感じます。

「意見は尖らせた方がいい」とか「とにかく断言すべき」という主張に対する僕の意見は「必ずしもそんなことはない」です。

何か1つの対象に依存して絶対化してしまうと、最初はその「わかりやすさ」ゆえにスムーズに手応えを感じることができるかもしれませんが、次第に閉塞感を感じてしまうはずです。

これは何にでも言えることです。常に1つの選択肢以外の選択肢の存在を認め、そして受け入れる。これによって客観的な視点で現状を捉えることができ、どんな状況になっても最適解を選び取ることができる確率が上がっていくんじゃないかなと思うんです。

少しスケールが大きくなってしまいましたが、Twitterの凍結にてんやわんやしている人たちの意見を聞いて、真っ先にこんなことが頭に浮かびました。

ということで、ぜひまずは第一歩として「プラットフォームへの依存度を下げる」ことと「常に代案を用意しておく」ことは、ビジネスがうまくいっている時こそ準備をしておきましょう。うまくいってない時に致命的なトラブルに対応するのは、肉体的にも精神的にも、とても大変ですから。

CHECK IT OUT!!

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この記事を書いた人

コギシノゾムのアバター コギシノゾム 株式会社BILLETT、MAKEST代表

スモールビジネス×ブランディングの専門家。副業で月間100万PVを集める情報サイトを運営していたことがキッカケで、マーケティングやコピーライティングの世界に深くのめり込む。2015年に独立起業。以降は個人起業家や中小企業オーナーを対象にブランディングやビジネス構築のコンサルティングを行う。理想の顧客に売り込まずに売れるブランド重視の情報発信ビジネスの提案力が、自分の想いを大切にしたい顧客から多くの支持を得ている。

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