ペルソナ設定について起業家・フリーランスが知っておくべき9個のこと

「ペルソナ」という言葉を聞いたことがありますか?

日本語で「仮面」を意味するペルソナですが、ビジネスシーンでは「プロフィールが細かく設定された架空のユーザー」という意味で長らく用いられてきました。

あらゆるビジネスにおいて、見込み客の像を具体的かつ的確に把握し、そして見込み客のインサイトをリアルに理解することは非常に重要です。特にスモールビジネスにおいては、「たった1人のための商品」あるいは「たった1人のための情報発信」を徹底することで、市場に刺さるコンテンツ・プロダクトを確実に提供できるようになります。

「少しでも多くの見込み客にアプローチしたい。その方が取りこぼしも減って、売上を伸ばすことができそうだ」と考える人もいらっしゃるかもしれません。気持ちはよくわかります。

ただ「万人に向けたコンテンツ」は「誰にも刺さらないコンテンツ」と同義です。

なぜMr.ChildrenやOfficial髭男dismの楽曲があれほどまでに人々の心を激しく動かし続けるのか。それは彼らの楽曲を聴いた時に「これは自分のためだけに歌われた曲だ」と感じる人が日本中に大量発生するからです。

ビジネスはラブレターと同じです。特定の人に向けてプロダクトを作り、特定の人に向けて情報発信する方が、結果的にあなたのビジネスに興味を持つ人が増えます。

だからこそ、長らくマーケティングの世界では「ペルソナ」をいかに設定するかが重要視されてきましたが、本記事ではペルソナ設定に関するセオリーと、ビジネスの成長に応じたペルソナのアップデート方法について具体的に紹介します。

目次

ペルソナを明確に設定するメリット

ペルソナを明確に設定すべき最大の理由は、あなたの商品やサービスを購入する顧客が誰なのかを特定することにあります。彼らが何に悩んでいて、どんな願望を抱いていて、商品やサービスに何を期待しているのかを、できる限り正確に理解することがペルソナ設定の目的です。

セールスに問題を抱える多くの企業、個人、スモールビジネス実践者たちは、ペルソナへの意識が希薄なままビジネスを実践しています。

つまり、顧客のニーズやインサイトよりも、自分たちの好みや伝えたいことを最優先してしまったり、メルマガやLINEでコミュニケーションを取る時も、見込み顧客の気持ちに言及することなく、やたらと自分の話ばかりしてしまったりと「自己中心的なビジネス」になってしまう。だから、見込み客の心を動かすことができず、最終的に売れないのです。

ビジネスの基本は徹底した顧客視点です。

自分中心ではなく、顧客を中心とした視点で商品を作る。自分が主語ではなく、顧客を主語にしたメッセージを伝える。こうした徹底した顧客視点があるからこそ、あなたの商品を買いたい人が増えていきます。

セルフブランディングする上でも「誰からの支持を得たいのか」が定まらないと、自分の魅せ方を定めて一貫させることは難しいです。まずは顧客を知る。そのためには当然ですが「絞る」必要がありますね。

ペルソナを規定する5つの方法

ペルソナ設定のポイントは、できる限り具体的に細部までイメージを膨らませることです。そうすることで、顧客がなぜあなたの商品を買うのか、仮説の精度を高められるからです。

そのための方法はいくつもありますが、僕たちが実際に行っている4つの方法をご紹介します。

1.実際の顧客にヒアリングする

既に顧客がいる場合は、直接ヒアリングをしてみましょう。

ポイントは顧客の中でも、あなたにとって最も理想的な顧客(エンゲージメントが高い顧客、価値を十分に受け取ってくれている顧客、良い関係性が築けている顧客、あなたが役に立てていると実感できている顧客)に絞ってヒアリングすることです。

実際にあなたの商品やサービスを購入した顧客は、ただメルマガやLINEを読んでいたり、Twitterやインスタグラムのアカウントをフォローしてくれているだけの人とは根本的に属性が異なります。実際にあなたの商品に魅力を感じたり、真剣に自らの課題を解決しようとして「お金を払った」という点で、顧客は僕たちが最も必要としている情報を持っているとみて間違いないでしょう。

そして、SNSのフォロワーと顧客が違うように、顧客の中にも様々な顧客がいます。

ペルソナ設定の目的は、あなたのビジネスの対象を深く理解することにありますから、顧客の中でも「よりあなたのビジネスの対象として相応しい顧客」の声をより一層リスペクトするべきです。

つまり、よりあなたの商品に価値を感じていて、よりLTVが高くて、よりあなたと良好な関係を築けている「この人みたいな顧客がもっとたくさん増えたらいいのに!」と思える顧客の声に耳を傾けましょう。

2.友人や家族、知人にヒアリングする

まだヒアリングできる顧客がいない場合、残念ながら「理想の顧客」と呼べるような顧客にまだ出会えていない場合は、将来的にそうなりうる可能性が高い友人や知人の「生の声」を聞くようにしましょう。

当然、自分のビジネス上のターゲットになりうるような知人である必要はありますが、仲の良い友人や家族であれば、実際の顧客よりも「よりリアルな声を引き出しやすい」というメリットがあります。

顧客に対して電話やメールで「あなたは当時何に悩んでいましたか?」と尋ねるよりも、友人を居酒屋に誘い出して「最近、仕事どんな調子?」とか「最近ダイエットどうよ?」とビールを片手に尋ねる方が、「いや、それがマジで酷くてさ〜」と簡単に本音を引き出せると思いませんか?

ペルソナ設定では「できるだけ高い解像度で顧客を定義すること」が必須です。そのためには「本音」をいかに引き出すかが重要なので、本音を引き出しやすい相手の力を借りることはとても効果的ですね。

3.ヒアリングだけではなく「観察」をする

人の本音を引き出すのは難しいと言いましたが、ヒアリングやアンケートを受けた側が常に本当のことを言ってくれるとは限りません。そもそも「自分の本音を言語化する」のは誰にとっても簡単ではないからです。

顧客に「商品購入の決め手は何でしたか?」とか「商品購入前に一番悩んでいたことは何でしたか?」と質問をして、果たして正確な答えが返ってくるでしょうか。大半の顧客は過去に抱いていた感情を覚えていませんし、つい話を盛ってしまったり、恥ずかしい思いを隠してしまったり「ちゃんとした回答をしよう」という意識が強まった結果、事実とは異なる答えを述べてしまうケースは非常に多いものです。

だからこそ、僕たちは言葉だけでなく「行動」に着目するようにしています。

多くの場合、人の本音は言葉ではなく行動に出ます。普段どんなコンテンツに触れているのか、日々どんな行動を取っているのか、どんなキーワードで検索し、どんなSNSアカウントをフォローしているのか、そういった1つ1つの行動をできるだけ知るようにしています。

そうすることで、言葉という表層には表れてこない、深層の心理や本音に少しでも近づくことができます。「インサイト」とは自分自身では気づかない(顕在化していない)気持ちを意味する言葉です。自分自身で気づけないということは、すなわち「言語化」だって難しいですよね。

だからこそ、「語られた言葉」だけを参考にするのではなく、普段どんな行動をしているのか、普段どんなインプットをしているのか…といったように、見込み客の日常におけるあらゆる行動を観察することが大事なのです。

4.書籍やWEBサイトを参考にする

直接誰かにヒアリングをしたり、自分の経験則から掘り下げるだけでは、主観的な視点が強くなりすぎてしまい客観的な視点が損なわれてしまう可能性があります。そこでオススメなのが、自分の専門領域に近い情報発信をしている人のコンテンツ(書籍やWEBサイト)を参考にすることです。

例えば、あなたがダイエットに関する商品を販売しているのであれば、巷で売れているダイエット本を5〜6冊読んでみましょう。特に序文や後書きを読めば、体型やダイエットに悩んでいる人のインサイトが必ず記載されていますよね。それは僕たちにとって非常に大きな参考になります。

特に売れている本であれば、マーケットリサーチに少なからずリソースを割いているはずですし、売れている=多くの人の心を動かしているとも言えますので、書籍やWEBサイトを参考にするだけで、自分の見込み客がどんな悩みやニーズを抱えているかを知ることができます。

またYouTube動画のコメント欄などを覗けば、見込み客の生の声を知ることができますね。

もちろんリアルな声を直接ヒアリングすることに比べたら解像度は下がりますが、一気に大量の情報を収集できますので、やらない理由は全くないと考えて差し支えないでしょう。

5.過去の自分をペルソナにする

扱う商材によっては、過去の自分自身がペルソナになるケースも考えられます。

過去にダイエットに悩んでいた人が「あの時こんなサービスがあったらよかったのに!」という思いを原動力にして、ダイエット商材をローンチするようなケースは多いですが、自分の気持ちは自分が誰よりも深く理解できています。そのため慣れないうちは「過去の自分を起点に考える」ことも非常にオススメです。

それに自分と少ならからずの共通点がある人を集客する方が、自ずと成約率も高くなりますし、コーチングやコンサルのようなコミュニケーションが軸となるサービスを提供する場合は、特に商品購入後の満足度も上がりやすくなります。その結果、紹介やリピートも増えやすくなりますね。

過去の自分が何に悩んでいて、どうなりたいと思っていて、何に挫折をしたのか。こんな過去の経験は、ペルソナを規定する上での重要なヒントになり得ますね。

ペルソナを規定する方法まとめ

  • 実際の顧客にヒアリングする
  • 友人や家族、知人にヒアリングする
  • ヒアリングだけでなく「観察」をする
  • 書籍やWEBサイトを参考にする
  • 過去の自分をペルソナにする

ペルソナを定義するための19個の質問

上記の方法でペルソナの人物像やインサイトについて絞り込むことができたら、より具体的にペルソナのプロフィールを設定してみましょう。

そのためには、より具体的にイメージが浮かぶように、以下の質問に順番に答えていくと良いです。

  1. 名前
  2. 年齢
  3. 性別
  4. 住んでいる場所
  5. 家族構成
  6. 職業
  7. 収入
  8. 学歴
  9. ライフスタイル(平日、休日)
  10. 大切にしている価値観
  11. 今現在の最大の悩み
  12. 将来の目標、願望
  13. 「11」を解決し「12」を叶えるために実践していること
  14. 普段のインプット先(本、雑誌、YouTubeなど)
  15. 好きな場所、よく行く場所
  16. 普段お金を使っている対象
  17. 趣味
  18. 好きな雰囲気や世界観
  19. コンプレックス

決して簡単ではないと思いますし、実際に書き出してみると、それなりの時間や労力がかかることに気づくはずです。ただ「誰をターゲットにするのか」が曖昧なままビジネスを行っても、自然と選ばれるブランドを構築することはできないので、ぜひ腰を据えて集中して取り組んでみましょう。

また、重要なことは1人のペルソナの心の奥底を知ることです。つまり彼or彼女の「人生を理解すること」なので、ぜひ1つ1つの回答に対して「なぜ?」と掘り下げることも大切にしてください。

例えば「職業」と「学歴」を決めたら「なぜその大学に入学することにして、就活を経て、その企業に就職することにしたのか」までストーリーを想像してあげることが大切ですね。

もし「広島大学を出た後に広島市役所に就職」であれば地元愛が強い堅実な人で、もしかしたら親の期待に沿うことの優先度が高いのかなと想像できます。あるいは「山形から慶應大学に出てきて在学中のインターンを経てWEB系のスタートアップに就職した」のであれば、新しい価値観やカルチャーが好きで、常に自分の枠を広げたい人なのかなと考えられます。

これらの質問は、その答えそのものに意味があるというわけではありません。あくまで顧客の大事にしている価値観や行動傾向、趣味嗜好をできるだけリアルに特定するための質問ですので、ぜひ「1人の顧客を深く理解する」ことを目的としたペルソナ定義を行っていきましょう。

ペルソナ設定の注意点

ペルソナ設定について解説されたビジネス本やWEBサイトを読むと「ペルソナはとにかく具体的に設定しましょう」といったことが必ず書かれています。それは間違いではありませんが「プロフィールの具体性を高めること」はあくまで手段であり、それ自体が目的ではありません。

ペルソナ設定を頑張っている人の多くは、必要ない事柄まで具体的に絞り込みすぎてしまうという問題を抱えています。

例えば、「幼少期の習い事はバレエで週に3回吉祥寺駅から徒歩10分のバレエ教室に通っていた」といったようなことまで詳細に記述する人もいますが、そこまで細部を詰めたからといって、それがあなたの顧客理解にどれだけ繋がるのかという批判的視点は常に持ち合わせているべきです。

ペルソナ設定の目的は、顧客のニーズ(顕在化された願望)とインサイト(顕在化されていない願望や悩み)を高い解像度で理解することです。つまり商品購入に無関係な部分にばかりこだわり、「なぜそのペルソナが私の○○という商品を購入することに至るのか」に繋がる部分がボヤけてしまうのは絶対に避けたいところです。

また、ペルソナとなる人物像は「あなたの顧客になりうる人物」であることも忘れてはいけません。

具体的にプロフィール設定したのはいいものの、「でも、その人って特に悩みがなさそうだし、商品の購入に至らないんじゃない?」とか「でも、その人のプロフィールから考えるに、悩み解決のために、あなたの商品じゃなくて別の○○という選択肢を選ぶと考える方が合理的じゃない?」となってしまうケースも意外とあるあるです。

ペルソナ設定はあくまで自分の顧客を増やす(=売上を伸ばす)ために取り組むものであるという前提は常に頭の中心に据えておきましょう。

「顧客が商品を購入する理由」を特定するために行う

つまり、ペルソナ設定における全ての質問は「なぜあなたの○○という商品をその顧客は購入するのか」という問いから掘り下げて行うべきであり、ペルソナを定義した結果、あなたの商品の購入者の像がより鮮明になるようである必要があります。

例えば、あなたがパーソナルのダイエットコーチを行っているとしたら、家族構成も仕事も年収も「ダイエットコーチの申し込みを増やす」という当初の目的に沿って定義しなければいけません。

例えば、「学生時代から付き合っていた彼女と結婚して3年目で、最近は仕事が忙しく急激に太ってしまって、妻との関係性は悪くないが、もっと昔のようにドキドキしあえる関係性を取り戻したいと考えている、年収1000万円の総合商社マンの男性」と考えると、「高単価のパーソナルダイエットコーチ」の顧客像として解像度がかなり上がりますよね。

年収1000万円と定義したのは、高単価サービスの顧客像として相応しくなるからです。もしこれが同じ悩みを抱えている年収300万円の男性だとしたら、あなたのサービスの顧客にはなり得ない可能性が上がるでしょう。

また「総合商社」としたのは、年齢と年収の関係性によるものですが、もしこれが同じような年収を同じような若さで手にすることができる「外資系金融」や「外資系コンサル」「大手広告代理店」としてしまうと、そもそも忙しすぎてダイエットコーチに時間を投資する発想がないのではないかと考えられるのと、失礼かもしれませんが「結婚後の悩み」というインサイトとはミスマッチするような印象を受けたからです。(「いつまでもモテる良い男になる」というニーズを狙うのであれば、より適合するかもしれませんね)

このように、ペルソナ設定における全ての具体化は「自分にとって理想的な顧客を増やすこと」を目的にしましょう。それはつまり「あなたの将来の顧客が、なぜあなたの商品を買うことになるのか」をロジカルかつ感情的に納得できるような形で定義することを意味します。

情緒的価値を高めるために行う

ペルソナ設定が「顧客が自分から商品を購入する理由を行うもの」であるならば、「趣味」や「よく行く場所(好きな場所)」は何のために設定する必要があるのか、と思われたかもしれません。

ただ一見すると商品購入に関連する「悩み」や「ニーズ」と関係のなさそうなこれらの要素も「顧客から選ばれる」ために非常に重要です。

機能的価値と情緒的価値という言葉を聞いたことがありますか?

機能的価値とは言葉の通り機能面に関する価値で「スペック」とも表現できます。情緒的価値とは機能面以外の感情的な面での「売れる理由」です。例えば、バルミューダの調理家電やAppleのMacbookは「何となくカッコいい」とか「これを使っている自分が好きになれそう」という理由で愛用している人も多いですね。

最近ではあらゆる市場で機能面での差別化が難しくなっています。そのため「いかに顧客の情緒に刺さるプロダクトを作るか」が重要視されていますが、だからこそ顧客が好きな雰囲気や世界観、憧れるライフスタイルを感覚的に理解することはとても重要なのです。

コミュニティ時代のペルソナ設定

ここまで「ペルソナ」の設定方法について見てきましたが、これまでのマーケティングの常識では、ペルソナは「たった1人の顧客の像を明確に定義するもの」とされてきました。

ただ、今は「体験」や「空間」、「コミュニティ」が重んじられる時代です。顧客側も「どんな商品やサービスを受け取れるか」だけでなく「どんな空間の一員になるのか」「周りには他にどんな顧客がいるのか」という要素を重要視して、商品やサービスを選ぶようになっています。

そこで僕たちがオススメしているのが

  1. まず1人の明確なペルソナを定義する(上記の流れで)
  2. 周りにどんな顧客がいたら、そのペルソナがプラスの感情になるかを考える

という流れです。

僕たちは「神7マーケティング」というマーケティングの流れを提唱しています。これはつまり、自分にとって理想的な7人の顧客を集めて、彼らに満足感の高いサービスを提供することで、自然と自社商品のブランディングが向上し、7人に憧れた別の顧客が新規で流入してくるという考え方です。(ネーミングはかつてのAKB48を参考にしています)

まずは神7におけるセンターポジション(かつてのAKB48でいう前田敦子さん)のペルソナを具体的に規定したら、そこまで具体的でなくてもいいので、その周りにどんなメンバーがいたら、顧客のグループとして理想系になるのかを想像してみましょう。

僕たちが以前運営していた起業家向けのコミュニティでは、ペルソナを自分と近い属性の男性にしていましたが、「もっと年上のイケてる40代のクリエイターがいると空気も締まるよね」とか「男女比も半々くらいの方がコミュニティの空気も活性化されていいんじゃないか」とか「女性だったら、こういうビジネスをやってる人もいた方がいいだろう」「でもここまで広げすぎてしまうとブランドのイメージが希薄になって中途半端な印象になる…」という視点で、あらかじめ顧客の属性をデザインしていました。

もちろん全てが事前の計画通りになることはありませんが、1人の顧客のペルソナを決めたら、その顧客の周りにどんな仲間たちがいるとプラスになるかという視点もぜひ持ち合わせてあげるといいですね。

自分には相応しくない顧客「逆ペルソナ」も決める

このような流れでペルソナを定義できたら、よりペルソナ設定の威力を高めるためにも「自分の顧客にはなり得ない人(=逆ペルソナ)」を定めることをオススメします。

あなたに何かしらの機能的価値(英語が得意、ゴルフのスコアアップを教えられる、YouTubeの再生回数を増やすためのコンサルができる…etc.)がある場合、その機能的価値を必要としている人は、きっと世界中にたくさんいることになりますよね。

ただ自分の提供できる機能的価値を欲しがっている人を全員お客さんにするのは現実的ではありません。あの人もこの人も全員顧客にしようとすると、セールスも商品設計も情報発信も全てがブレてしまいますね。

だから「ペルソナ」を設定する必要があるのですが、「こういう人は自分のお客さんには相応しくないよね」という像を決めておくことで、自分の中に一本のブレない軸を設けられるようになります。

こういう話をすると、多くの人がこんな風に逆ペルソナの条件をリストアップします。

  • クレーマー気質
  • 他者依存心が強い
  • 礼儀正しい振る舞いができない
  • すぐに人の悪口を言う
  • 支払いが遅れる

などなど。これらは理想とは程遠い顧客の特徴であることは確かなのですが、「当たり前」すぎて、自分のコアを際立たせる結果には結びつきません。

大事なのは「自分にとっての理想的な顧客にはなり得ないけど、他の別の誰か(or別の商品)にとっては理想的な顧客になるペルソナ」としての条件を挙げることです。あるいは「自分の持っているスキルや個性、価値観や哲学では、少し貢献するのが難しそうな人」をイメージするのもいいですね。

僕が初めて起業のコーチングを販売した際は、「社会のレールに沿って頑張ってきたけど精神的に限界を感じている人」がペルソナでした。学生時代から挑戦心に溢れていて、アクティブに色々挑戦をしてきた人ではなく、そういう人たちを横目に羨望と嘲笑の入り混じった感情を抱えながら「挑戦できてない自分」にモヤモヤしていた人がターゲットであり、そうではない「学生起業したり海外でインターンしたりバリバリやってました!」という人はもっと別の相応しい学びの場がある、いわば逆ペルソナだったわけです。

ペルソナを変更したくなったら

一度ペルソナを設定した後に、ビジネスを何年か続けて「今のペルソナ設定で本当にいいのだろうか」「もっとステージ感の高い顧客をペルソナにすべきではないだろうか」「初心者向けのビジネスを実践するのに疲れてきた」と悩む人も多いはずです。

ただ「今まで上手くいってきたわけだし変える必要もない」とか「自分を必要としているお客さんがいるから…」と、ペルソナに対する違和感に耳を塞ぐ人が大多数ではないでしょうか。

ビジネスを長く続ける中で、特に顧客の成長を支援するビジネスの場合、ペルソナのアップデート問題は誰もがぶつかる壁です。だからこそ、より多角的かつ柔軟な視点でペルソナを捉えることが重要です。

1人の顧客の人生を支援する

当然ですが、ペルソナには人生があります。ずっと同じ地点に留まり、年齢を重ねることもなく、ずっと同じ悩みを抱え続けて、ずっと同じ願望を抱き続ける…なんてことはありえませんよね。

例えば、僕は中学生の時に高校受験のために河合塾に通っていましたが、高校生になると大学受験のために同じ河合塾に通いました。今調べてみたら、大学院対策や就活対策、MBA取得用のプログラムもあるようです。つまり河合塾は僕たちの成長に応じて新たに生まれる課題やニーズに対して、多種多様の商品群を用意していることがわかります。

僕たちのビジネスもきっと同じですよね。

例えば、オンラインビジネスのコンサルタントであれば、

  • ゼロからオンラインビジネスを始めたい人
  • 売上をもっと伸ばしたい人
  • できるだけ自動で売れる仕組みを作りたい人
  • 個人からチームを作って組織を大きくしたい人

という成長のステップを思いつくことができます。これら4人の人物は、それぞれ別の人物ではなく、一人の人の成長のステップだと捉えることができます。ゼロからオンラインで商売を始めた人が、次に売上をもっと伸ばすための努力をして、売上が伸びたら自動化をしたいと考えて、それもクリアできたら今度は個人事業主という規模ではなく組織的に規模を拡大していきたいと考える。1つ1つのペルソナは1人の成長ストーリーを点で捉えただけにすぎないのです。

これはまるで高校受験→大学受験→就活や資格と、キャリアアップを目指していく若者のストーリーを支援する河合塾と同じような仕組みですね。

あるいは著名なファッション系YouTuberの方は、ユニクロやGUに興味がある人向けの動画をメインで出しつつも、メゾンマルジェラやバレンシアガといったハイブランドの解説系動画も配信しています。

これも複数のペルソナを対象にしているように見えつつも、実は「ユニクロやGUを卒業して、単価5万円くらいのドメブラを経由して、単価20万円前後のハイブランドに興味を持つ」といった、洋服好きのAさんの成長ストーリーに応じたコンテンツ設計をしていると捉えることができます。

初心者向けのペルソナ作成に成功したら

多くのビジネスプレイヤーは、まずその市場の中の「未経験者」や「初心者」に向けたビジネスを展開します。

よく色んなビジネス系インフルエンサーが繰り広げている「自信がなくても大丈夫。自分よりちょっとでも経験がない人を相手にできれば価値提供できるから」という主張に合理性を感じて、「自分よりも経験がない人であればお客さんにできるだろう」と感じるからです。

最初はそれでもいいかもしれませんが、十分に価値を受け取った顧客は初心者から上級者にステップアップします。その過程であなた自身もレベルアップするので、次第に初心者ばかりを対象にしたビジネスを実践することに疲弊するようになりますし、精神的な虚しさを感じることも増えてくるかもしれません。

また上述の理由から、初心者をターゲットにしたコンテンツを展開するプレイヤーは市場に次々と表れます。「副業初心者の教科書」のようなネーミングの教材は市場に溢れかえっていますし、この市場で勝負し続けることは、常に絶え間ない過当競争の世界に身を置き続けることを意味します。

だからこそ、初心者を対象にしたペルソナ作成に成功したら、顧客の成長に合わせる形で、中級者・上級者フェーズのペルソナも作成していきましょう。そして顧客のサクセスストーリーを支援する形で、商品ラインナップも充実させていけたら理想的ですね。

初心者を完全に切り捨てる必要はない

ビジネス歴が長くなると「初心者をターゲットにするのをやめる」という判断を下す人も多い傾向にあります。ただ、上述の通り「初心者かどうか」はあくまで時間軸における1点での話です。今初心者の人でも1年後には中級者になり、5年後には上級者になっている可能性があります。

大事なことは1人のペルソナの人生を思い描くことです。

例えば、僕の周りを見ていると、ダイエットに成功した人は次は筋トレにハマります。筋トレで理想的な身体を手に入れた後は「もっと美しくなりたい」という要求が強くなるのか、かなりの高確率で全身脱毛をするようになり、バターコーヒーなど心身の健康を意識した食事への関心も高まっています。

あるいは、副業でお金を稼いでみたいと思って転売ビジネスを始めた人が、自分のECサイトを作るようになって、最終的には自分のブランドを作ってD2Cビジネスに移行してバイアウトする…というケースもありますね。

大事なのは、1人のペルソナの成長過程に応じた別々の商品やサービスを、それぞれ用意してあげることです。

「初心者」といっても十把一絡げにする必要はありません。初心者の中にも様々な人が含まれていて、成長意欲が低く「楽して結果を出したい」とだけ考えている人もいれば、自分の夢を叶えるために前向きに努力することを厭わない知的好奇心と情熱に溢れた人もいます。

自分にとって最も理想的な顧客像のペルソナがアップデートされて上方修正されたとしても、「そのペルソナの過去バージョン」のような人であれば、それはあなたの顧客になりうる人だと言えます。

例えるなら、リザードンがペルソナだとしたら、リザードンの進化前形態であるヒトカゲのことを無視してはいけないということですね。

初心者を見くびってはいけない

「初心者をペルソナにする」ということは、レベルの低いものや視座を下げたコンテンツを用意しなければいけないと思っている人は多いですが、それは大きな間違いです。

繰り返しになりますが、重要なことは「1人のペルソナを意識したコンテンツを届けること」です。そして、ビギナーステージの顧客が「ビギナーを対象にしたもの」を好むかというと、それは全くの別問題でしょう。

例えるなら、ファミリーレストランでお子様ランチではなく、大人向けのセットに興味を示す子どもも少なからずいるのと同じことです。

僕たちがクローズドで募集しているマーケティングのスクールには、主婦の方もたくさん参加されています。ただ、僕たちは主婦の方を対象にした発信を一切行っていません。それでも主婦の方がたくさん参加されているのは、彼女たちが「主婦」扱いされることを実は嫌がっていて「ママでも在宅で起業できる!」というよくありがちなコンセプトのスクールを敬遠しているからです。

それと同じように初心者だからといって「初心者向け」を謳う商品やサービスを好き好むかというと必ずしもそんなことはありません。特に知的好奇心が高く、これまでの人生で何かしらの成功体験があり、それなりの誇り高さを有している人であれば、少し背伸びをしたコンテンツを好む傾向にあります。

結局は「誰を集めてきたいか」次第です。

そこと向き合う時に「初心者」だからと言って、彼らが初心者向けのコンテンツ・プロダクトを好むと思い込んでしまうのは大いなる誤解です。初心者の皆が「副業初心者が毎月1万円稼ぐ方法」という無料コンテンツを好むわけではなく、中には『影響力の武器』や『ストーリーとしての競争戦略』に触れてワクワクする人も確実にこの世界にはいるのです。

だからこそ「1人のペルソナ」を深く理解して寄り添うと共に、自分にとってのベストな顧客は誰になるのかを常に真剣に考える姿勢をぜひ大事にしていきましょう。

最後に

ペルソナ設定の重要性に気づいている人は多いと思いますが、プロフィールを詳細に記述することが目的になってしまっている事例をよく見かけます。大事なことは目的と手段を混同しないこと。プロフィールを細かく書き出すことは、顧客を深く理解するための手段でしかありません。

そして顧客を深く理解することは、あなたが気持ちよくビジネスを実践し、精神的に負荷をかけずに売上を伸ばしていくための手段です。

最終的な目的から逆算しない限り、ペルソナ設定だけに限った話ではありませんが、あらゆるマーケティング施策は形骸的なものとなってしまい、成果に直結する努力にはなり得ません。

そして、ペルソナは1人の具体的な人物像を表すものですが、

  • ペルソナの詳細設定は購入理由を明確にするためのもの
  • 1人のペルソナには人生があり、人生の中で成長していく

ことは忘れるべきではありません。ぜひこの記事で紹介した考え方を踏まえて、あなたが心地よく売上を伸ばしていけるように「理想の顧客」の定義にお役立ていただけたら嬉しいです。

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